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西島建男歌集3

西島建男歌集3 

 

67  鬼灯に雷雨打ちつけ

     赤深み光刺されば

      妻のまぼろし

 

68  担架から夏の青空透き遠く

      サイレン光り

       いのち雲に混じる

 

69  読書こそ我が抗がん剤わくわくと

     活字の点滴

      百日草咲く

 

70  腹の傷切腹の痕何回も

     へなちょこ武士の

      涙の流れ跡

 

71  そよ風とワルツ踊れば

     絹の靴なでしこのリズムで

      宙を滑りぬ

 

72  薔薇窓のマリアの光

     君の瞳にウインクした

      サントシャペルよ

 

73  岩山に刳り抜かれたる修道院

     坂を登れば

      猫寝そべりおり

 

74  金閣寺粉砂糖の雪降りかかり

      君の睫毛にも

       金閣隠れぬ

 

75  さんさんと樹のみどり降る湖水に

      老いた白鳥

       憂いてたゆたう

 

76  老馬ゆく競馬引退しとぼとぼと

      かつてのこころざし

        いま何処にありや

 

77  伊万里皿白地に藍の唐草に

     カツオの赤身の

      花すずやかに

 

78  デパ地下で大えびのフライ

     一尾買い仏壇の前で

      食べる野分の夜