西島建男歌集7

232 首相よ苦難に立ち向かい逃げるな
         富裕税を作り
       福祉弱者を救え


233   宿泊所で孤老がひっそり死ぬ
        税金を贅沢に使う
          政治家は自腹で


234       公正中立 第三者とは自己ごまかし
        権力者のポチは
          電柱に小便もせぬ


235      嘘つきの仮面の詐欺師
      危機をあおり安保から経済不況
        党利党略のため 


236  増えるのは軍事研究 防衛費
       平和国家が
        欺瞞国家に


237  警察はパトカー追跡は「適正」と
      適正によって
        無辜の民独り死す
 

238    偽女権安倍家父長に尻尾ふり
           靖国の桜に
              散華する母
 

239  秘密さえ秘密になる花園よ
       政府官僚よ
         どの秘密花切り捨てる

 

240  年金の天引き増えて菜種梅雨
          介護市民税貧者には
                 タックスヘブンは無きか

 

241  紫陽花の唇描き亡き君の
              キスなき歳月を
             夢中で吸いたり


242  水鳥の水底飛ぶ光の速さ
        我は流れて
         岩の苔になる


243  予感して今月か来月かガンで死す
       亡き妻の顔
        赤き牡丹で迫る


244     医療では「不適切」な処置は命失う
        政治家は豊かな
         暮らしで団欒す


245  政治家も選挙も無き桃源郷
       紫陽花ほほえみ
         民平安に暮らす

 

246  着物誘い袖から手入れ

      乳房触る粉ぬか雨のような

       かすかな音聞えぬ

 

247  朝かと思い午前三時に起き

        寂しさに月の庭さ迷えば

          新聞来る

 

248  政治家を全廃せよ税金を

       孤老貧困子どに

         市民管理で

 

 

249  なめくじがモネの画集に

      寝そべりゆったりのんびり

       絵をなめつくす

 

250  地震揺れマルクス鴎外

      大の字に鼾をかきて

        活字は白紙に

 

251  ナスの苗薄むらさきの花さけり

         死ぬ前に茄子の

           味噌汁飲めるか

 

252  買物にいけなくなる日寸前なり

         杖つきはって

           デパ地下にいかん

 

253  医者はいうもう治療法なしと

        医療麻薬で

         自由にさまよう

 

254  絶望せず希望もぜずに我がさだめ

          ただ祈るのみ

            庭石を磨く

 

255  祈るのは神でも天でもありえない

        存在する我に

            山茶花に祈る

 

 

256  天国か医療麻薬飲み痛み消え

       海鮮焼きそば食べ

         抹茶ゼリー旨し

 

257  予報士は狼少女コピー機なのに

        脅しの名人

         竜巻、土砂、豪雨

 

258    NHKニュース気象庁のいうままに

         政治社会批判よりも

           天候なら一致す

 

259     梅雨ただよいトルコ桔梗の青き縁

               白き花眼鏡

       好きだった亡き君見よ

 

260  梅雨の朝尿瓶を流し心去り

       しとしと雨が

         頻尿を誘う

 

261    本当なし嘘ばかり語り支持をえる

       政治家も同じ

          オレオレ詐欺

 

262  戦争中前進あるのみと

         兵死に行く立ち止まりて

            過去から学べ

 

263  英国は自己中心の島国なり

         日本も同じ

            世界が見えない

 

264     フォーレのレクイエム聴けば

              豊かな死漂い

       キュウリの黄色の小花に触れぬ

 

265   苦しくて妻の名呼べば

          遠雷の梅雨の雨に

            響きけり

 

266  幸福の木この10年花咲かず

        肥料やっても

           枝伸びるだけ

 

267   おむつ変え尿パット変えて

        ガーゼを変えて夜寝られず

          ガードマン忙し

 

268 ラブ来てわが門前で

       おしっこし尾を3回振り

           静かに去り行く

 

269 石井アナスポーツ報道よりサポーター

     自分好みの選手を

         「ファミリー」にする

 

270  スポーツの客観報道を自国の選手

         だけのナショナルな

            ナルシスゲーム 

 

271  青空に軽やかに飛ぶ我が存在

        鳳仙花のようさよなら

          ふわふわさらさら

 

272  裏切られ悲しみが塀の上

        つるバラがぐんぐん伸びて

           止めを知らず

 

273  真夜中に自分のからだ

         かたまりに他人の意識で

           少し浮きたり

 

274  茄子たれてトマトうす赤く

         鉢植えに雨かすかに濡れ

           アンダンテのいのち

 

275  ほろほろと才能のなさの

           悲哀鳥

         薔薇門前に散り涙まじりぬ

 

276  月笑う才能のなさを蟻運ぶ

         嫉妬の死体

        脹らみふくらみ  

 

277   蜘蛛の巣は喜び飛びかり餌を喰う

           嫉妬汁には

               酔いかす

 

 

            

 

 

 

  

        

   

          

         


            

西島建男歌集6

西島建男歌集6 

 

 

201   ほととぎす庭で鳴く聞けば

         亡き君へ便り届けと

          喋りまくりぬ

 

202  夜桜のトンネルくぐれば

       放射能の国境閉じ

         幾十年たつ

 

203  藤棚に首を吊りたれ下がりたし

       ガンの痛み消え

        紫に輝く

 

204  照明で夜桜恥ずかし

      しみ見えて月化粧消え

        陰翳なき裸なり

 

205   妻の声「まだ生きてるの」

        夢で抱き汗ふき起きて

         這うクモを逃がす

 

206   日傘さし乳母車に息子のせ

        そよと馬事公苑歩く

         妻をふっと思う

 

207  死んだ後あの世の次の世

      存在す妻見つからずば

        次の次追いかける

 

208  雑草を抜き洗濯もの干せば

       急に世界は

         白く消え倒れ

 

209  菜種梅雨カラスの糞は

        白い花カオリバンマツリ

          紫が白になる

 

210  船傾きセイレーンの声

       つややかに深海の誘い

         我溶け込み行く

 

211  ネペンテの霊薬飲みたし

       忘却の河渡りて

         失う時なし

 

212  暗闇に香り交差し

      モクレンの肌触れれば

        君は匂い鳥飛ぶ

 

213 民謡に「枯れて落ちても二人ずれ」

      一葉落ちて独り

         老幹を触りぬ

 

214  年老いて炊事洗濯無知の山

       トイレ雑草抜き

        猫まずさ嗤う

 

215  セックスは獣の格好

        愛の実を笑って女は

         不快さでにらむ

       

216  年老いて明日がない

       命短し攻めよ今日がある

         夢は次世界を見る

 

217  胡蝶蘭かすかに鳴れり

       光りの音電位変化の

         アルトフルート

 

218  五月の夜雨の木流す水滴よ

       地球のマグマに

        囁きかけり

 

219  死の待機終末ホスピス求つつ

       行列し朝焼け

        開店まだ来ず

 

220   宇宙線我がからだ貫き

        ミューオン光速落ちて

          消えず命延び

 

221  蜂来たり花挨拶で首たれ

       接吻を受け

        うっとりねっとり

 

222  採血室は常に満員なり

       アマゾンのジャガーは血飲み

        醗酵酒に酔う

 

223 次々とヨブのごとし苦難来る

       耐えても老後は

         鯨の腹の中

 

224  三陸の水底深く光る月

       子の幸せ願う

        遺体の夢映る

 

225  阿蘇の月大橋渡れば

       地鳴り父母の声かすかに

         若者は土に溶ける

 

226  警察はストカーが狙う

         女性をば救えず

      テロ防止に熱中す

 

227  沖縄のレイプ女性を

         政権は救えず

          基地維持に熱中す

 

228   棺桶に三本の指かけ入ろうと

          背後から多数の

         海棠の花引き止めぬ

 

229   リヒテルシューマン幻想曲

        聴けばラインの川底に

            命突き刺さりおり

 

230  フォーレのレクイエム聴けば

         青空の断崖を

           静かに滑落す

 

231   我が庭のドクダミの花

         白き不妊地下茎の力で

           妻の無念はらす

 

 

 

 

        

         

      

       

 

        

        

        

        

        

         

 

 

西島建男歌集5

 西島建男歌集5 

141 五年たつ津波でいたむ

       ランドセル引き取りてなく

        炉で火となりぬ

 

142  死のヴェールめくれば

        永久の雪原に光り満ち

           ペンギン転びぬ

 

143  身障の赤き手帳を

        受け取りぬ

       塀のすき間にタチアオイ咲く

 

144  愛感じず死んで初めて

        妻への愛幻想から飛び

          現実になりぬ

 

145   人の妻

        白き素足のサンダルばき

          盗み見した青春のふるえ

 

146  (戦争幻景歌6首)

 

     (1) 子ども盾ジリジリと兵は近寄りぬ

         撃つか撃たぬか

           白き指引きつりぬ

 

147 (2) 車通れば仕掛け爆弾

       破裂しぬ

         手足空に飛び内臓塩辛に

 

147  (3) 狙撃兵照準定め

       黒髪の頭を撃てば

         記者ほほえみて無し

 

148  (4) 病院も学校も

        地図の図形かボタン押せば

           空白のしみ

 

149  (5) 首斬れば橙色の罪衣

          紫の砂

              無言で沈み行く

 

150  (6) ロック響き

          銃撃の音リズムになり

           倒れし人はテロの血ドラム

 

151  押入を開ければシールびっしりと

     幼児の息子

         ガンダムで飛びだす

 

152    亡き妻の

        ピアノ弾く音に彷徨いぬ

         酔いどれは森の沼の彼方に

 

153   石投げろ催涙弾涙枯

         白き石壁を

          民族の血赤く

 

154  寺小屋でわが子の首を検分し

       泣けずに泣けし

         いじめいけにえ

 

155  拉致されしわが子追って

      北の海白く

       冬の花火消ゆ

 

156    四回目ガン手術戦場か

      わが明日は白いもや

        勇気高ぶる

 

157    猫うなり腸凍る夜

      人工の肛門軽く

        うすものの生寒し

 

158     あじさいの若角生きよと

       勢いあり

     ヤッデの小粒の花は鬼ごっこ

 

159  戦争のつもりになって幻想し

       落語「だくだく」

          歌に血が出た

 

160  亡き君のワンピース

         くるまりて涙

             背のホクロ触る 

 

161  わが身体無数の

       注射針のあと

        母の遺体思い浮かべぬ 

 

162  白き乳首吸いめくるめく

       富士の張り

       シュークリームの甘さとろけり

 

163  ランの花冬の厳しさ生き残り

       偶然のごとく

         薄紫あり 

 

164  おやじテロで刺され助けられず

       夢見たと息子よ逃げよ

         我は立ち向かいぬ

 

165  死んで生き行きて帰りぬ

         登りて降り永劫回帰

           桜咲き散りぬ

 

166    検査見て余命半年と

         驚かずうなぎ蒲焼食べ

            涙流れる

 

167  肝臓に三ヶ所のしみあり

      増殖の速さ

        新幹線競う

 

 

168   ペゴニアは

       きいろみどりあかむらさきと

          桜散れば爆笑し合う

 

169   骨白し隣に座れば

        言葉なし雪はワルツ踊り

          墓うす化粧す

 

170   骨壷のとなりに座れば

         君笑うおまたせしたと

           我も微笑む

 

     

171   桜の木落下傘になり

       病室飛びて公園で遊ぶ園児に

        花びらまけり

 

172   鶴見川五本の桜

        呑み込みてボートは小魚

         花は擬餌食らいつく

 

173   妻死し夜子猫

       玄関屋根の上

        星に向かいて呪文となえり

 

174  抱き倒れベット軋みシーツしわ

      隣気にして

       口にバター含みぬ

 

175  手術して解剖学の教科書と

                         違う血管と聞こえる

                            我は何者

 

176  桜花世界の破れた穴ぼこへ

      流れてゆけば

       溺れ消えぬ

 

177   日光に柿の若葉に梅新芽

        がん細胞を

         包めよみどりに

 

178  知りたやな鹿の心を

        軽やかにいま草山跳び

          穏やかに死ぬ

 

179   竹やぶが動く黒い風

         泊まらないと誘う

             鬼女から逃れぬ

 

180    墨塗りの教科書開き

          学びし時TTPの

               文書見て戻る

 

181   死んだならオリオンには行かず

        ふたご座の流星群で

          放散し飛び散る

 

182   ルビー燃えさそりの心アンテルス

         嫉妬の毒もち

          オリオン追い出す

 

183  さよならを大桟橋から空に投げ

         涙は波に

          青き音滑る

 

184  薬漬け若葉芽吹き

       手足しびれ髪抜け落ちて

         生明るく見ゆ

 

185  朝焼けを録音したら食べる風

        夕焼けを録画したら

            泣く光りの音

 

186   永遠の声天から響く

         岩砂漠に憐れみ救い

             刻みたれたり

 

187  兼好が下賎な魚を食すと書く

       鎌倉で美味し

         初鰹たべ

 

188  つつじ咲くガンセンターで定年前

        ペン折し友と

           飲みたい夕闇

 

189  熱情で大地動き

        家潰れ土砂怒る

          わがさだめの島

 

190  恋しくてつつじの赤花

          点滅し合図送れど

             抱くは白い風

 

191  蛇うねり六角橋の商店街

       屋台でちくわ咥え

        辞任を決意す

 

192  十条の商店街の鶏ボール

        頬張り劇見て

          殺陣に狂いぬ

         

 

193  足踏んだカネよこせと脅す

         少年の目

          寂寥の影

 

194  チンピラに追いかけられ

       電柱に登りてミンミンと

          鳴けば馬鹿かと笑い去る

 

195     モクレンの香り舌刺し

          口吸えば月の歯光り

             椿の実硬し

 

196   病みほうけ電線見れば

        ムクドリが流星群のごと

         嬉々と飛び立つ

 

197   若冲見れば赤とさか

         にわとりが黄のひまわりに

            見得切りいいよる

 

198  梅雨に濡れ渋谷ラブホ前

      不倫揺れ紫陽花の色が

        変わり別れぬ

 

199  つるばらの白露の花は

       踊り狂い宴の後は

        地に吸い込まれぬ

 

200  ゼラニウム紅花はとさか羽みどり

        庭を競歩

          せわしく去りゆく

         

         

         

        

 

 

 

 

 

      

 

   

 

      

 

   

 

 

   

 

   

西島建男歌集4

西島建男歌集4 

 

西島建男歌集4

 

79  伊豆山に妻を喪くして

     来てみれば

      千人風呂なく砂浜もなし

 

80  波響き息子と入る露天風呂

     水平の雲に

      生き延びし我を見ゆ

 

81  夏の夜に八岐大蛇襲い来て

     万華の花火

      降り注ぎ来たり

 

82  誘うよう抱きしめ迫る

     波のうねり

      巨大なる生きた羊水の動き

      

83  初島とにらめっこする

     苦虫のテトラポット

      笑う波追い立て

 

84  錦ヶ浦自殺の名所も

     庭園に変じ聳えるホテル

      岩壁も緑に

 

85  雨月の夜物語ひも解けば

     愛憎の蝶

      胸を乱舞す  

 

86  運河よどみ洗濯物垂れ

     ヴェニスにゴンドラ滑り

      妻月光に浮かびぬ

 

87  十二桁数字に化した

                         データの身を

                             蚊がまずそうに盗み吸うなり

 

88  アホウドリ滅びぬ離島で

     知のコピー鳥

      ドローン人喰らう

 

 89  空き家増え

     妖怪と猫住み

      マンション傾き人々衰えぬ

 

90  核ミサイル巨根の露出の

     パレードよ

      終末戦の秋黒い雨降る

 

91    核のゴミ黒き袋は

         放置されカラスもとまらず

             大水に漂う

                

92  更地捨て

     かさ上げされた新地あり

      消えた廃墟は記憶薄れゆく

 

93  潮風に恋人抱き合い

        汽笛鳴り

       地下の震災の瓦礫うずく

 

94  つかのまの

     前生と後世の端境期

      柿の実熟し小鳥ついばむ 

 

95   なぜ燃える散り枯れる前に紅葉の火

        溶岩流れ枯れて

          黒い岩捨てられ

                    

96  (芭蕉に捧ぐ2首)

    秋深し組体操崩れ

     隣の子骨折せり

      ああ運動会

 

97  夏草やしゃれこうべ白し

     兵士夢も見ず

      地雷生き続けぬ

 

98  秋空に楕円のボール放物描き

     高きポールの間

      刃で切り裂く 

 

99  一億の総活躍に入らぬ我

       虫の死骸運ぶ

         アリをじっと見っめぬ

 

100    爆撃でふるさと喪い砂ぼこり

          閉め出す異国へ

              歩き歩きゆく

     

101  早死し沖縄の友よ吾苦し

      珊瑚レイプされ

       海ひかり埋められ

 

102  わが首相原子空母に乗りはしゃぐ海

       核地下水で

         不機嫌なり波 

 

103  いくさ時に

      文学部無用と廃されりいままた

        「明暗」読み心暗き

 

104  東大の軍事研究

       資金もらいジキルハイドの科学

           ひと悩ます                 

 

105  みじんぎり涙出ぬタマネギの

       苦しみ身に染む

        情なき秋風

 

106  歌出来ず一年二回の大手術

      尿もお通じも

       アウトソーシング

 

107  お尻無し縫い合わされて

      サイボーグ

       朝焼け富士窓から迫る

 

108  痛みよりかゆみの方が

      つらしという看護師見ながら

             痛み止め飲む

 

109  老い枯れず元気な吾に

      ガン喜びぬ

       増殖出来るぞ

 

110  高熱の手術過ぎて

      そよぐみどり

       抹茶アイスの宇治の山風

 

111  妻が死し病院ベットで

      手術後に妻の代わりに

       少女の夢見る

 

112  遠くを見る純なひとみの

      テロリスト人を殺して

       理想は濁らざるや

 

113  病床で007吾なりぬ

      追いかけられて

       雪渓を一つ飛び

 

114  岩レンゲ家族を愛する花言葉

      絶滅しそうでへばりつく

       誕生花

 

115  ボジョレでなく抗生剤で乾杯を

      誕生チョコは10錠の

       痛み止め

 

116  凍れる夜歯から爪まで

      震え出す敗血症

       細菌雪崩れ

 

117  病には連休なしか

      細菌は残業までして

       お前はブラック企業

 

118  サーフィンタンゴの波は

      ひるがえり砂地は地球

       白菊乱れ飛ぶ

 

119  わが庭の柿の実

      息子もぎ取って

       退院出来ぬ失いし時喰う

 

120  雨の夜尾灯・信号赤なみだ

      病窓燃え

       血はルージュ引きぬ

 

121  死の夢覚めれば山茶花

      ひらひら

     生の夢覚めれば椿どさどさ

 

122  回転し重力遁れジャンプする

      氷上のコマ

       寝たきりで見る

 

123  白き鳥朝日浴びて羽キラキラと

        固まりて飛ぶ見

           癒える予感す

 

124   光熱費見ながら我も加担者と

          北極クマに

              頭下げたり

 

125   氷河融け地球の涙

       島沈み土のひび割れ

          聞こえるうめき

 

126  総持寺の青銅の屋根夕日光り

       異世界に向かう

          離陸の手振る

 

127   悔いは無し

        奇跡の君とめぐり合い

         未知の世界巡り愛憎に激しても

 

128  病床で愛した記憶女性の顔

        わきいずれば

           微熱でうなされたり

 

129  朝日あび高層ビルの屋上に

        バニラアイスの

           富士山のれり

 

130   秋の月まだ生きている我が命

          病室で聞く

            かすかな叫び

 

131  山の神神野大地名前よし

      骨折乗り越え噴火を

       抑え走る

 

132  福袋爆買い嬉し新年の

       命永らえ

       痛みしばし消ゆ

 

133  エビカニの天ぷら蕎麦

      すすりけり猿になり

        見えぬ枝に飛びうっりたり 

 

134   SMAPは一つだけの花になりきれず

          自立し

                                          崖に咲く百合になれ

 

135   お雑煮をつくる息子は

            亡き妻の味と同じにと

                     ちがうもうまし

 

135  名古屋へと単身赴任する息子に

             先の尖った

                 牛革靴贈りぬ 

 

136   冬の夜半ドヴォルザーク

             チェロの音に

                穏やかな死祈り夢に落つ

 

137  短歌とは57577素数なり

         自己しか約せず

           暗号を解け

 

138 ペリュリューサイパンマニラオキナワと

         天皇の慰霊

           九条の夢の旅

 

139   佐渡の海

          我が上司消えぬ船中から

              妻の詐欺の罪つぐない悲し 

 

140  天皇の慰霊の旅に

         戦没者戦争しない国の

               白菊に笑む  

       

             

              

   

  

 

 

 

   

       

 

      

 

      

 

西島建男歌集3

西島建男歌集3 

 

67  鬼灯に雷雨打ちつけ

     赤深み光刺されば

      妻のまぼろし

 

68  担架から夏の青空透き遠く

      サイレン光り

       いのち雲に混じる

 

69  読書こそ我が抗がん剤わくわくと

     活字の点滴

      百日草咲く

 

70  腹の傷切腹の痕何回も

     へなちょこ武士の

      涙の流れ跡

 

71  そよ風とワルツ踊れば

     絹の靴なでしこのリズムで

      宙を滑りぬ

 

72  薔薇窓のマリアの光

     君の瞳にウインクした

      サントシャペルよ

 

73  岩山に刳り抜かれたる修道院

     坂を登れば

      猫寝そべりおり

 

74  金閣寺粉砂糖の雪降りかかり

      君の睫毛にも

       金閣隠れぬ

 

75  さんさんと樹のみどり降る湖水に

      老いた白鳥

       憂いてたゆたう

 

76  老馬ゆく競馬引退しとぼとぼと

      かつてのこころざし

        いま何処にありや

 

77  伊万里皿白地に藍の唐草に

     カツオの赤身の

      花すずやかに

 

78  デパ地下で大えびのフライ

     一尾買い仏壇の前で

      食べる野分の夜

西島建男歌集2

西島建男歌集2

51  小さな位牌あわてて買い

     君の名は「釈尼貞華」

      あなたはどなた

 

52  君の弾くピアノ曲を聴きたいな

     はやく帰ってきて

      調律も終えたし

 

53  中華街肉まんの乳房に

     炒飯の油はぜ

      口づけかわす

 

54  握手会アイドルに力士

     エモるねイケメンイケジョ

      イケボのカミの手

 

55  看護師の乳房の張りを

      見つめつつ

       しばし麻酔の夢と戯れん

 

57  目覚めればチューブ6本

     甲虫に変身し

      標本になりぬ

 

58  肝臓の灰白に光る切除した

     ガンを嫁に見せ

      医師は笑みぬ

 

59  治療室夜半に

     チューブ引き抜きし老人は

      手足しばられうめけり

 

60  点滴の落ちる音さえ五七音

     痛みは歌よ

      看護師は芙蓉

 

61  亡き妻に恋文来たり

     絵友達

      紫陽花妖しく香煙なまめかし

  

62  キュウリの実

      キュウキュウリリかめば

       失恋の朝の夏風重し

 

63  突然に若き女性に口吸われ

      おしゃべり断たれ

       背骨水仙

 

64  きみの舌はましょまろのよう

      なめらかに背中のホクロ吸えば

       西瓜の種飛ぶ

 

65  大鷲に鉤爪で掴まれ

     翼鳴り山並みの谷を

      飛び落とされぬ

 

66  ビロードの川うねりゆき

     氷の滝を滑り降り

      海溝の底裂け目に沈みぬ

 

        

西島建男歌集1

テイ挽歌       西島建男歌集1

 

1   白骨を砕きて散りぬ

   かよわくも妻の小指の

    灰さらさらと

 

2   死なんとし宇治川の淵

   さまよえば大文字の火

    あかあかと燃ゆ

 

3   捨ててよと遺しし言葉

   古い日記を土に埋めれば

    蟻二匹這う

 

4   妻枕恋を忘れじ

   長夜明け涙と添寝

    夢でも会えず

 

5   仮の宿君の描きし

   水彩画うつろわず光る

     ひまわりの花

 

6   今も夢昔も夢と

     朧夜に

       帰らぬ君の衣いだきぬ

 

7   罪背負い

     救いなき道一人ゆく

      熟した梅の実ぽとりと落ちぬ

 

8    黒き蝶ハイビスカスに

      涕泣し妻テイの魂

         さまよい飛ぶ

 

9    宵闇の目黒川にも桜散り

       みなもに浮かび

       妻の髪にも

 

10    郡上の盆「春駒」踊れば

      亡き人たち夜通し笑みて

      輪を描きたり

 

11     心電の音切迫し

      別れの挨拶涙一粒

       頬流れ落つ

 

12     カルテ見て

      誰にでもゴールありきと

       つぶやく医師を我は憎みぬ

     

13     竿灯のゆらゆらゆれる提灯や

      あるかあらぬかゆらめく

       星月夜

 

14     死も楽し君の待つ場所

      遅れずにレンゲツツジ咲く

         霧深き朝に

 

15     我が心なぐさめかねつ

      妻ひとり病院に置き去りし

       木枯らし泣く夜

 

16     年老いて友も死にたえ

      陽炎にそよぐ枝葉の

       柏の木ひとつ

 

17     いちょうの葉黄蝶が飛ぶよう

           大地覆い忘れた記憶

             胃腸切り裂く

 

18     携帯の君の番号消しきれず

          かけてはすぐ切る

            秋の夕暮

 

19     秋風や病癒えんと欲す日々

         寒し老馬とぼとぼ

           すすき原歩みぬ

 

20     しあわせの季節去りゆき

          みな笑う家族写真に

            ほこり降りゆく

 

21    裏切りを知りもせず

         逝きし君への悔い

           闇夜の霧笛に臓腑震え

 

22    失くしたと尋ね歩きし

         妻の写真お盆に見つかり

          涙留まらず

 

23    チベットで八千個の星

         輝けり我頭上には

            かそけき光のみ 

 

24    川白く「サヨナラダケガ人生ダ」

       井伏鱒二

          竿のヤマメ逃れ

 

25    膨れる海なみだ

       ただよいただよいて

     アメリカの西の浜辺抱きしめり

 

26   コピペ恥じ交差点渡れば

      あれれれれコピペの私と

        鉢合わせになりぬ

 

27   こがらしの愛憎の棘鋭く

      貫きみどりの沈黙

       かたまり沈む

 

28   養子にと願いし人に断りし夜

       ひっぱる母の手熱し

 

29   死に際に会いたしと願う養子

      望んだ人の手冷たく哀し

 

30   泡だて器ピンクとホワイト

      ぐるぐると怒れる頭

       ヒヤシンスなだめり

 

31   帰国の朝ムクゲの唇とき髪の

      韓国夫人に

         別れのキスせん

 

32   胎内で無垢の希望のまま

      死にし子薄き骨埋めれば

        モクレン薫りぬ

 

33   冬の朝アトピーで悶える息子

      僧になりたしと

       父「空」になりぬ

    

34   狂う母包丁片手に死なせてと

       腹に抱きつく

        我の肉のうずき悲し

 

35   狂う母電話線を引きちぎり

      通話を遮断し

       ころげまろびぬ

 

36   伊豆の海大漁旗の船一隻

      米軍機が撃ち

       蜜柑の黄溶けぬ

 

37   米特使の車の屋根踏み

       反安保叫びし

        叔父の亡霊今懐かしき

 

38   心臓を移植させてよ

      サーフィンの美女の

       乳房の谷滑べりたし 

 

39   白砂に十六夜月たゆたいて

        石庭の岩

         宙に浮かびぬ

 

40   苔庭の三日月照れば

        青き蟻無数にうごめき

          地下に潜りぬ 

 

41   朝焼けにベイブリッジの灯

      けだるく海はあくびし

        桟橋は背伸びす

 

42  春西日ベイブリッジを染め

      カモメもだえ

        観覧車笑うも白雲動かず

 

43  潮風の外人墓地に夕やみにじみて

      ブルーの子音

       かすかにきこえぬ

 

43  海の青染まらず

     白き巨船の胴

      船出をいやがり埠頭にまどろむ

 

44  新緑の悲しみ色の

     接着剤岩なだれではがれ

      富士山よ泣け

 

45  富士山と一緒に入る露天風呂

     涙は溶剤

      月光の泡よ飛べ

 

46  いのししの皮剥がれ落ち

          青き胴重力脱し

            竹林の小径から飛ぶ

 

47  孤立死を恐れる老人

     昼カラで桜坂歌い

      白い一毛散りぬ

 

48  洞窟の奥から名呼ぶ声あり

     覚めれば腸のかけら

      地下に落ち行く

 

49  砂時計砂漠を嫌うナルシスよ

     時間を恋し

      ぐにゃりと曲がる

 

50  放射線わが身貫ぬき

     修羅の影

      黒き穴から這い出て笑う